デジタル田園都市国家構想

デジタル田園都市国家構想(予算総額5.7兆円)とは何か?


「デジタル田園都市国家構想」とはデジタル実装を通じて地方が抱える課題を解決し、誰一人取り残されず、全ての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現するという構想です。
岸田内閣の看板政策の1つであり、第205回国会の岸田文雄首相による所信表明演説において表明され、デジタル田園都市国家構想実現会議において検討されており、令和3年度補正予算と令和4年度予算を合わせて5.7兆円を投入する大型政策です。
⇒最新版のデジタル田園都市国家構想基本方針(案)はこちら。

基本戦略

「地方と都市の差を縮め、都市の活力と地方のゆとりの両方を享受できる国」を実現することを目的とし、デジタル技術によって、どこにいても大都市並みの働き方や質の高い生活が可能になる「人間中心のデジタル社会」が理想的な社会像として位置付けられています。そしてその実現に向けて、デジタルインフラなどの共通基盤の整備や、地方を中心にしたデジタル技術の実装を進めていくことが、デジタル田園都市国家構想の方針です。

背景としての「地域格差」

岸田内閣がこうした政策を打ち出す背景には、地域格差の問題があります。現在、地方では産業の空洞化、交通・物流インフラの衰退、教育機会の減少などに起因する、高齢化や過疎化が進んでおり、大都市圏との経済的・社会的な格差が深刻化しています。
こうした地域格差を是正するため地方へのデジタル技術の実装に重点を置き、具体的な施策として以下の4つに取り組むとしています。

(1)デジタル基盤の整備:

5G(第5世代移動通信システム)、データセンターなどのデジタル基盤の整備を推進。国家主導のもと、共通ID基盤、データ連携基盤、ガバメントクラウドなどを全国に実装する。

(2)デジタル人材の育成・確保:

地方で活躍するデジタル推進人材について、2022年までに年間25万人、2024年度末までに年間45万人育成できる体制を段階的に構築し、2026年までに230万人を確保する。

(3)地方の課題を解決するためのデジタル実装:

交通・農業・医療・教育・防災などの各分野について、デジタル技術を活用して効果的に地域課題を解決するための取り組みを全国できめ細やかに支援する。併せて、地域づくりを推進するハブとなる経営人材を国内100地域に展開する。具体的には、「デジタル田園都市国家構想推進交付金」を創設し、地方公共団体によるデジタル技術を活用した社会システムづくりやサテライトオフィスの整備・運営などを支援する。デジタル田園都市国家構想推進交付金は、①デジタルを活用した地域の課題解決や魅力向上を支援する「デジタル実装タイプ」、②地方への新たなひとの流れを創出するためサテライトオフィスの施設整備等に取り組む「地方創生テレワークタイプ」の2種類に分けられ、令和3年度補正予算で200億円の予算が編成されています。

(4)誰一人取り残されないための取り組み:

年齢・性別・地理的な制約などにかかわらず、誰でもデジタル技術の恩恵を享受できる「取り残されない」デジタル社会を実現する。

目指す将来像

本戦略によって目指す将来社会像は、構想実現会議においてそのイメージが示されています。
特にデジタル庁が提出した資料では、政府の主導により整備されたデジタルインフラと公共サービス基盤の上で、産業・知・暮らしの変革が進み、「心豊かな暮らし」(ウェルビーイング)「持続可能な環境・社会・経済」(サスティナビリティ)「地域発の産業革新」(イノベーション)が実現する社会像が描かれています。以下に「成功の鍵」と「暮らしからの変革」について図示します。

デジタル田園都市国家構想の成功の鍵(出典:デジタル田園都市国家が目指す将来像について(デジタル庁)

暮らしからの変革(出典:デジタル田園都市国家が目指す将来像について(デジタル庁)

こうした社会のなかで、人々は「ゆりかごから墓場まで」、最先端の知・仕事・文化と触れ合うことができ、デジタルの力で子育て、教育、生活、安全安心、介護・医療、相続など、人の一生を包括する最先端のデジタルサービスを受けられるとされています。
現在では多くの場合、教育、仕事、治療・介護などのために「地域」から離れざるを得ない環境となっていますが、本構想により田園都市で最先端の知、仕事、文化とふれ合うことができ、デジタルの力によって教育から生活、医療に至るまで時空を超えた最先端サービス提供の実現を目指します。

投資規模

デジタル田園都市国家構想は、その名の通り「国家構想」であり、今後、国家戦略特区による規制改革など、総合的で大胆な施策が見込まれます。はじめに述べた通りデジタル田園都市国家構想には、令和3年度補正予算と令和4年度予算を合わせて、5.7兆円の予算が投入されることが決定しています。
岸田首相が掲げる「新しい資本主義」はあまりよく理解できない部分が種々ありますが、その実現の柱であるデジタル田園都市国家構想により、国内の通信インフラなどの整備が迅速に進み、デジタル技術の活用が加速されることを期待します。





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